【お笑い芸人がモテると思う理由】

   

   突然だが、私は和牛の川西賢志郎(以下「川西氏」)が好きである。和牛といえば、毎年12月に開催されるM-1グランプリで3年連続準優勝という実績を残した実力派お笑いコンビで、丁寧に作り込まれたネタと見事な演技力で観客を魅了してきた。そしてそれだけではなく、ツッコミ担当の川西氏はその端正な顔立ちから、他の多くの芸人に「吉本でいま一番人気がある」と言わしめる女性人気を誇っている。かくいう私も、冒頭で述べたように彼の容姿に惹かれた1人である。

   川西氏のみならず、最近ではアイドルのような人気を獲得するお笑い芸人が非常に多い。例を挙げると、アインシュタイン河井ゆずるや、ミキの亜生などがいる。

   しかし彼らのように容姿が優れた人以外でも、”お笑い芸人がモテる”というのは昔からよく聞く話である。私は川西氏に注目するようになって以来、そこから派生して他のいろいろなお笑い芸人も見るようになった。そして、私は”お笑い芸人がモテる”ということに納得した。その理由を述べていきたい。

 

①話し上手、盛り上げ上手

   お笑い芸人は文字通り笑いを生業としている。自分の行動や発言で笑いを誘発する彼らが喋りを苦手としていては話にならない。彼らはプライベートで女性に会うときも持ち前の話術で相手を楽しませているはずだ。1対1でも合コンでも、しっかり自己アピールをした上で場を盛り上げ、多くの女性を惹きつけるのだろう。

 

②「身近さ」と「珍しさ」の二面性

   言うまでもなく、お笑い芸人は芸能人である。芸人という職業の性質上、人から虐げられたり体を張ったりする場面は頻繁に目にするため、どうしても少し格が下がる印象は受けてしまうが、それでもれっきとした芸能人である。しかし、劇場での出待ちや地域でのイベントなど、俳優やジャニーズなどと比べると、近い距離で会うことが叶いやすい。そんな彼らは、芸能人という「珍しい」存在でありながら、「身近に」会えるという二面性を持っている。きっとこのハイブリッドに惹かれる女性は多いのだろう。

 

③危うさ

   お笑い芸人に限らず、芸能人という職業はある種の水商売である。冒頭で言及した和牛のように、絶大な人気を誇っている間は安定した収入を得ることができるが、その人気がいつまで続くか予想することは不可能であり、世間の人々の興味が失われたときには仕事量が激減し、それに伴って収入も減る。特にお笑い芸人は一時的に人気を獲得しても、飽きられて注目されなくなるということが多い。

   先日、私は新宿の劇場に漫才を見に行ったのだが、知らないお笑い芸人が前説を担当していた。そのうちの1人が、「先月の吉本からの給料が8000円だった」という自虐で観客の笑いをとっていた。もちろん話を脚色している可能性はあるが、本当の給料が8000円より多いとしても僅かな額であることには変わりないだろう。そして、どんなお笑い芸人にもこのような状況に陥る恐れはいつでもある。

   人生の伴侶とするには安心できないが、ある程度の責任が伴わない恋人とするならばこの危うさがむしろ魅力的に映る。女性は彼らの危うい立場を見て、「私が支えなければいけない」という使命感に駆られ、そしてそのうち彼らを支えることで自己肯定感を高めるようになる。生活の大半を彼らが占めるようになり、離れがたくなっていく。

 

④ひたむきさ

   基本的にお笑い芸人は「自分達が一番おもしろい」と思っており、自分達にとって「一番おもしろいもの(ネタ)」を届けるために日々ひたむきに努力を重ねている。どんなに滑っても、失笑されても、彼らは人々を笑顔にしたいという一心で、ネタを考え、練習し、時には相方とぶつかり合いながら作品を作っていく。このひたむきさに心を奪われ、母性本能をくすぐられる女性は少なくない。先程述べた「危うさ」と相まって、自分が支え応援したいと強く思わせる要素である。

 

   以上が、私が以前よりお笑い芸人がモテると考えていた理由である。もっとも、私は川西氏の容姿に惹かれた身なので彼の内面の理解までには至っていないが、彼を「好き」だと公言する以上、より彼の内面も知る必要があると考えている。川西氏の「容姿にだけ惹かれた」ファンが「ペラペラファン」と揶揄されるように、笑いを生業とするお笑い芸人を容姿でだけ判断するのも考えものである。

   また、人が人を好きになるということに他人があれこれ言う資格はないが、自分が一ファンとしてお笑い芸人に本気で恋をし、愛してしまった場合には、極端に言うと不毛で危険な恋に片足を突っ込んでいる自覚を持つ必要がある。個人的に、恋愛感情は理性を容易に超えると思っているので、抑制しきれないほど強く彼に心惹かれているのなら、だからこそ彼に迷惑のかからない範囲で愛情を注いで欲しい。度が過ぎた応援はただでさえ気を緩める時間が少ない彼らの貴重なプライベートを奪ってしまうし、そもそも自分の強い恋愛感情に基づく行動は応援の皮を被ったエゴに過ぎない。

   多くの女性がお笑い芸人に惹かれるのは納得できる事実だが、あくまで常識の範囲内で各人がお笑い芸人という生き方を心から応援して欲しいと切に願う。